空気清浄機の花粉、PM2.5に対する効果について検証して、対策についてお話させて頂きます。
始めに
家電メーカーのカタログを見ていると、空気清浄機を買えば森羅万象に効きそうな事が書いてありますが本当にそうなのでしょうか?
一応、どのメーカーも御大層なグラフと有難い研究機関の名前を列挙していますが、オカルトイオンの例を見るように牽強付会なテストで我田引水な効果を謳った物が大半です。胡散臭いですよね。
騙されないためには、まずは対策すべき敵を知る事から始めましょう。
今回はまた小難しくなるかも知れませんが、何せ相手が小難しくてやっかいな代物です。居眠りしない程度に噛み砕いてお話しますから、寝ちゃダメですよ(笑)
花粉
花粉の性質と花粉症
花粉症の方は花粉の写真を見ただけでムズ痒くなるかも知れませんが、少し我慢して下さいね。本題に入る前に、もう一度花粉の性質について復習してみましょう。
花粉のサイズはおよそ30μmと人の髪の毛を一回り細くしたサイズで、空気清浄機で扱う粉塵としてはかなり大きい物です。無風状態だとおよそ30秒で、またブルーエアの話だと一般的には毎秒約2cmの速度で落下し床に落ちてしまいます。
但し、これは花粉が完全な状態を保っていた場合の話で、花粉が破裂したり潰れたりした場合は0.5~1μm程度の大量の微粒子が放出されます。これらの微粒子はアレルゲンを含みますから花粉同様の対策が必要になります。
花粉が破裂するのは水分を吸った場合です。そして一番最悪なのが皆さんが花粉を吸った時ですね。鼻の粘膜に付着した花粉は人の体液を吸収してそこで破裂します。鼻粘膜の免疫細胞のすぐそばで大量のアレルゲンを撒き散らす訳ですから、大量のヒスタミンが分泌されてアレルギー反応が起きる訳です。これは目も同様です。
花粉が潰れるのは主に物理的な力によってです。空中を漂っている間に自然崩壊する事もありますが、地面に落ちて人や車に踏まれたり、あるいは室内で床に落ちて人に踏まれて潰れます。
花粉シーズン序盤は花粉のまま皆さんのお宅に到達するケースが多いのですが、時間が経つに連れ潰れた状態で到達するケースが増えて来ます。特に都市部の場合は発生源である森林から遠い事と、舗装が行き届いた道路網など、花粉が土に帰る事が出来ずに何度も踏み潰され風に巻き上げられて皆さんのお宅に侵入します。
また、一旦細かくなった微粒子は、皆さんが想像するより遥かに長時間空中を漂い続けます。花粉シーズンが終わっても症状が治まらない事があるのは、都市化とこの微粒子の性質のためです。
次の表をご覧下さい。こちらはフィルタの回でご紹介した千代田テクノルさんからお借りした「粒子の重力沈降速度」表です。但し、この数値は無風状態での測定値ですから皆さんのお宅の場合は少し異なります。環境にも依りますが、恐らくもっと遅くなるでしょう。
ご覧の通り、粒子は小さくなるにつれて長時間漂い続け、皆さんはそれを吸い続ける事になります。ですから、なるべく花粉が潰れない内に処理する事が望ましいのですが、その際は時間との勝負になります。
逆に、潰れてしまえば慌てなくても良いのですが、その際は微粒子に対する捕集力が問われます。また、いくら慌てる必要がないと言っても、浄化に時間がかかればその間は皆さんが微粒子を吸い続ける事になりますから、絶対的な風量は快適さと同義になります。非力な空気清浄機は花粉症にはあまり役には立たない訳ですね。


花粉症対策と空気清浄機
それでは花粉症対策としての空気清浄機の効能を考えて見ましょう。
花粉が壊れていない場合は30μmもありますから、中性能フィルタでも十分に捕集出来ます。プレフィルタでもある程度取れるでしょう。その代わり大風量のモデルでないと大半を取りこぼして床に落としてしまいます。
花粉が壊れている、あるいは潰れている場合は厄介です。粉塵のサイズは0.5~1μm程度にまで小さくなりますから一定のフィルタ能力が必要になります。HEPA信者の方なら大騒ぎするところですね(笑) 但し、ここに盲点があります。この0.5μmと言う粒子のサイズは粒子単体のサイズであって、これが単独で飛んでいるとは限りません。
花粉が壊れた場合、クリジェと呼ばれるアレル物質片になるのですが、必ずしも綺麗に崩壊する訳ではありません。幾つかの粒子が固まりになって飛散する場合もあります。特に踏まれて潰された場合は外郭の一部と花粉の中身が一緒になった断片状態になりますから、実際のサイズは30μm以下と言うだけで様々な大きさがあります。30か0.5かではありません。
また一旦道路に落ちた様な物は、花粉単体以外に何か他の粉塵に取り付いて飛散する場合もありますから、その際も全体の粒子サイズも大きくなります。特に都市部はこうした状態の物が多いです。
ですから必ずしも0.5μm程度の微粒子の捕集率が高くなければならない、と言う事にはなりません。実は飛散している粒子の大半は1μm以上の物ですから、実際は中性能フィルタで花粉の大半は捕集出来ます。
ですから、花粉対策としてならフィルタを搭載した空気清浄機ならば機種や方式に関わらず体感出来る程度の効果はあるでしょう。効果の程度は空気清浄機の風量に比例して大きくなり、風量が同じなら高性能なフィルタを使った機種が若干有利になります。予算の範囲でなるべく対応畳数の広い物をお選びになるのがベストです。
最も効果的なのはブルーエアやカドーのように大風量で高性能フィルタを使った物になりますが、その辺りはお宅の大蔵省とご相談下さい(笑)
逆に、イオン式は殆ど効果がありません。クーロン力には1μm以上の大きく重い粒子を遠くから引っ張って来るだけの力はありません。花粉の側からぶつかりでもしない限り捕集は無理だと考えて下さい。
また、イオン式のように常時オゾンを発生する物、これはプラズマクラスターのようなイオン生成器も含みますが、花粉症の方はこうしたオゾンを発生する物はお使いにならないで下さい。症状が悪化する可能性があります。また肉親に花粉症等のアレルギー疾患をお持ちの方がいらっしゃる方もお使いにならない方がベターです。オゾンには花粉症を発症する閾値を下げる作用があるとする研究があります。つまり花粉症が発症しやすくなる作用ですね。オゾンと花粉症との因果関係はまだ研究途上ですが、君子危きに近寄らずです。避ける方が良いでしょう。
花粉症はやっかいな病気ですからそれがボタン1つで収まるならば、と考えがちですが残念ながら世の中それほど甘くはありません(笑) 空気清浄機がリカバー出来るのは極一部です。ただ、1つだけならダメでも幾つか組合す事で相乗効果が生まれます。次はその辺りを見て行きましょう。

花粉症対策と家電
花粉症対策では花粉をどう処理するかが重要なのですが、こうした空中の微粒子は湿度に大きく影響を受けます。乾燥した室内だと長時間漂い続けますが、十分な湿気を与えると落下速度が速くなります。さらに、一旦床に落ちた花粉が舞い上がりにくくなります。ですから、加湿器を併用する事で室内に漂う花粉の量を減らせます。また、十分な湿度は花粉症の症状を軽減する効果もあります。
そして、花粉対策として最も効果的な家電製品は空気清浄機ではなく掃除機です。
どれだけ高性能の空気清浄機でも部屋に侵入した花粉を全て除去出来る訳ではありません。室内に侵入する花粉の6割は窓や換気口から入って来ますが、残りの4割は洗濯物や人に付いて侵入します。これらの全てを空気清浄機で対応するのは不可能です。
ですから、一番良いのはマメに掃除をする事です。フローリングのご家庭はクイックルワイパーのように濡れた物で拭き掃除をして、それ以外は掃除機をお使いになる事です。鼻水垂らしながら毎日掃除をするのは憂鬱ですが、少しでも楽になりたいのなら他に方法はありません。忍の一字です(笑)
掃除機は高性能紙パックを搭載した上面排気モデルが一番良いのですが、本体も紙パックも高価なのが玉にキズですね。そんな場合は、通常の紙パック掃除機を花粉シーズンだけ高性能紙パックに換装して使うと言う方法もあります。
これはメーカーによって、あるいは機種によって出来る場合と出来ない場合があります。下に紙パックの適応表のリンクを用意しました。お使いになっている掃除機、あるいは購入予定の掃除機がありましたら事前にご確認下さい。

花粉症対策リンク
花粉症に関してネットで調べると怪しげなグッズや民間療法が扇情的な文句で喧伝されていますが、大半はロクでもないモノですから安易に乗せられないで下さいね。彼らが興味があるのは皆さんの財布の中身であって、皆さんが健康になる事ではありません。気をつけて下さいね。
注意するだけでは芸がないので花粉症に関して信用できる資料やリンクを幾つか用意しました。基本的な事柄が多いのでご存知の方も多いでしょうが、興味がおありならご一読下さい。
お役所の資料と言うと堅苦しそうですが、執筆されているのはお医者さんですからかなり平易に書かれています。特にこちらの「的確な花粉症の治療のために」はイラスト主体で書かれてますから分かり易いと思います。
こちらは花王の資料です。よく中身の無いコピペブログが無断盗用してるのがこの資料です(笑) よく盗まれるだけあって分かり易く書いてあります(笑)
こちらはお馴染み国民生活センターの資料です。バカ高い高性能マスクを売りつけようとする人間が後を絶ちませんが、そんな物には意味がない事をハッキリと書いてあります。これは空気清浄機にもそのまま当てはまります。HEPAフィルタガーとか言ってる人間は信用なさらない事です(笑)

PM2.5
始めに
「中国の2010年の死因、約15%の123万4000人がPM2.5が原因!」こんな記事に記憶がありませんか?
これは今年の4月にレコードチャイナが報じた記事なんですが、トレンド系ブログは勿論、大手のメディアまでそのまま転載して大きな話題になりました。ですから怖いと思った方も多いのではないでしょうか。ですが、それは正しい反応ではありません。正しい反応とは…
「そんなもん、どうやってPM2.5だけが原因だと特定出来るんだよ、オラ」と言うのが正しい反応です(笑) PM2.5の性質を考えると、どう考えても特定出来る訳がありません(笑)
レコードチャイナの記事のソースになっているのはWHOの世界の疾病負担研究(GBD2010)なんですが、その中国に関する報告がこちらです。で、恐らく中段の「リスクファクター」がソースだと思われますが、ここにPM2.5なる項目はありません(笑)
一番近いのがAmbient PM pollution(大気中の微粒子汚染)ですが、これは8%しかありません(笑) しかもPMにはPM10,PM2.5とあり、PM2.5はこの中に含まれる一部です。全てではありません。
レコードチャイナの話だと15%ないと困るので、あと7%ほど必要になります。7%あって関係がありそうなのがHousehold air pollution(家庭内の空気汚染)です。家庭内の空気汚染とは中国の一般家庭は燃料に薪や牛糞、石炭など煙の出る物を多用します。この煙が汚染源ですね。で、この2つを合わせると丁度15%になります(笑)
つまりレコードチャイナの記者は中国人が吸う煙全てを「PM2.5」だと捏造した事になります。数字を合計している訳ですから意図的な物ですね。
まあ、共同通信や朝日新聞すら信じられないご時勢ですから中国人の言う事を信じる方がどうかしていますが、この大気汚染=PM2.5と言うのは日本のメディアの人間でもきちんと理解出来ていない人が沢山います。その分かっていない人達がドラや太鼓を鳴らして警戒を呼びかけている訳ですから始末が悪いです(笑)
間抜けな狼中年に騙されないためには正しい知識を身につけるしかありません。まずはPM2.5について知りましょう。

PM2.5とは
PM2.5とはPM(粒子状物質)の内、粒径が平均値で2.5μm以下の微粒子を指す用語です。平均値ですからバラつきがあります。確実なのは50%だけです。以下ですから下限がありません。0.001μmでもPM2.5です。
PMにはPM10とPM2.5の規格がありPM10が10μm以下を、そしてPM2.5は2.5μm以下の微粒子を指しますからPM2.5はPM10に含まれます。また、2.5や10と言う数字に特に大きな意味はありません。これは純粋に計測する側の都合で、測定する際のフィルタの捕集性能から来ています。
また、このPMはあくまでもサイズを表す物ですから、その組成は関係ありません。排気ガスだろうと土埃だろうと揮発性物質だろうと区分しません。単純に大きさのみを指します。つまり毒性があろうとなかろうと等しく扱われます。この大雑把さが厄介なところですね。
PM2.5の発生源は主に次の3つです。1つは工場のばい煙や自動車の排気ガス等の人為的に生成された物、もう1つは土埃や動植物由来の自然によって生成された物、最後はガス状の気体として大気中に放出された物質が光化学反応等で粒子状に生成された物です。3つの内、前2者を一次生成粒子、後者を二次生成粒子と呼びます。
PM2.5と言うとすぐ中国の名が出て来ますが、当然ですが日本でも普通にPM2.5は発生しています。と言うか、日本のPM2.5の量が減ったのはディーゼル車の排ガス規制を行ったここ10年くらいの話で、それまでは高濃度のPM汚染国の1つでした。ですが報道されてません。なぜなら日本が「PM2.5」と言う規格を採用したのは5年ほど前だからです。
つまり汚染はあったが、規格がなかっただけです。それを今になって大騒ぎするのもおかしな話ですね(笑)

PM2.5と健康リスク
メディア等による報道
PM2.5に関する問題で一番やっかいなのが健康リスクとの関連です。ネットで検索してみるとPM2.5がサリンのような毒ガス扱いされてますが、そんな扇情的な記事を書いている人ほど自分がその毒ガスを長期間吸い続けていると言う自覚がないみたいですね(笑)
他人事だと思っているからあんな無責任な記事が書けるのでしょう。
PM2.5で一番問題とされるのは、そのサイズの小ささから肺の奥まで侵入する事です。大きな粒子は肺に達するまでに痰などと一緒に排出されますが、粒径の小さいPM2.5の一部は肺胞にまで達して肺の免疫機能によって処理されます。その際、毒性の高い粒子の処理のプロセスで細胞が炎症を起こしたりする健康リスクがあります。
但し、ここにも誤解があります。こうした健康リスクが発生するのは、高濃度のPM2.5を5年とか10年とかのスパンで吸い続けた場合の話です。肺の処理能力を越えた微粒子を吸い続ける事で肺に粒子が蓄積し、その大量の粒子を処理する際に炎症等の健康リスクが発生します。1日や2日吸ったからと言ってどうこうなる物ではありません。
この辺りは喫煙による健康リスクと良く似ていますね。タバコの煙もPM2.5で、大量の発ガン物質を含みます。ただ、タバコ1本吸う時に吸い込むPM2.5の量は北京の大気汚染の比ではありません。こちらの方が遥かに有害です。そう考えると日本に流れて来る中国製PM2.5の害は受動喫煙以下と言う事になるでしょう。大騒ぎするほどの問題ではありません。
また、学者によっては0.1μm以下の微粒子は血液中に取り込まれて全身に毒が回るみたいな事を言ってる人がいますがこれも変な話です。そうした生体反応はごく一般的なもので、アルコール等がそうですね。アルコールはビール1本飲めば脳細胞100万個が破壊され、毎年春には屈強な若者が何人も命を落とす猛毒ですが摂取年齢以外に量の規制はありません。なにより現在までPM2.5の毒が全身に回って亡くなったなんて臨床例がありません。
また黄砂とPM2.5が反応して発ガン物質と疑われるNPAH(ニトロ多環芳香族炭化水素)になるなんて報道もありますが、これなんかタチの悪い煽りの典型ですね。なぜなら生成されたとされるNPAHの濃度が発表されていないからです。この手の毒物の場合、一番大事な事は「何が」ではなく「どれだけ」なんです。
プラズマクラスターの章でお話した通り、皆さんは日常的に空気中の発ガン物質のダイオキシンを100,000個/c㎥ほど吸っています。ですが問題になりません。この量では少なすぎて問題にならないからです。しかもNPAHはどの程度の濃度になるとどんな毒性があるか良く分かっていません。分かっていないのはこの物質は種類が多くて変異する上に毒性が低くて研究する人間が少ないからです(笑)
しかも、大気中のNPAH濃度を見ると黄砂の影響の少ない札幌は、黄砂が降り注ぐ北九州の10倍の濃度があります(笑)
まあ、騒ぎに便乗して研究費をせしめようとする先生方はどこにでもいる訳ですね(笑)

環境省の発表
2007年に環境省が行ったPM2.5等の微粒子の影響に対する報告書を読むと、PM2.5等を長期間吸い続ける事で健康リスクがあるのは確実だがその程度は少ない、と言う具合にまとめられています。
もう少し詳しく書くと、小児、老人、呼吸器循環器系疾患を持つ人達にはある程度影響が出る、そして重篤者の場合はPM2.5の濃度が10μm/㎥あたり死亡リスクが3%程度上がると言う物です。健康な人間にも影響あるかも知れないが、統計を見る限りは影響があると断言出来るだけの数値の違いは無いと言う事です。
また、健康体の人への影響は、通年で高濃度下で生活する場合に蓄積されて行きます。北京に住んでいると言うなら別ですが、中国からのPM2.5は気流の関係で黄砂と同じく春先に多く流れて来るだけですから、これが即健康リスクに繋がるとは考えにくいです。
中国の大気汚染はPM2.5だけではなくPM10や四日市ぜんそくの元凶だった二酸化硫黄や二酸化窒素も含まれます。実際に毒性が高いのは硫黄酸化物や窒素酸化物であって、こちらが呼吸器疾患の主原因でしょう。
例えばPM2.5の濃度だけ言うのであれば、サラリーマンでごった返す焼き鳥屋や居酒屋の店内のPM2.5の濃度は、スモッグで前が見えない北京の数値と変わりません。ですが焼き鳥屋の主人や居酒屋の店員が肺ガンでバタバタ倒れるなんて話は聴いた事がありません(笑)
大気汚染=PM2.5ではないのです。メディアの安易な煽りに乗せられないで下さい。
また、日本国内のPM汚染は70年代が最も最悪だったと言われています。これは高度成長とモータリゼーションに対して排ガス等の環境規制が遅れた結果です。現在日本のPM2.5の規制値は1日平均値が35μg/㎥以下となっていますが、この頃のSPM(PM7)の濃度は軽く100μg/㎥を越えていました。
仮にPM2.5が深刻な健康被害を出すとすれば、ピーク時から30年以上経過している現在ならその影響はハッキリ見て取れる筈なんですが、それを示すような数字は表れていません。これは規制するのが商売の環境省ですら公式に認めている事です。
PM2.5は無害ではありませんが、日本の厳しい基準値を越える日数は僅かですから大騒ぎするほどの事はありません。呼吸器、循環器系疾患をお持ちの方やアレルギー疾患をお持ちの方、そして子供と高齢者は避けた方が良いですが、一般の皆さんは過剰に反応する必要はありません。コーヒー飲んだり焼肉食べたりすると癌のリスクが上がるのと同程度と考えて良いと思います。

PM2.5対策と空気清浄機
家電メーカーの対応
大して心配無いと言っても心配な方はいらっしゃるでしょうし、受動喫煙以下と言ってもタバコと聞いただけで虫唾が走る方もいらっしゃるでしょう(笑) そこでPM2.5対策としての空気清浄機について考えて見たいと思います。
まずはメーカー側の対応を見てみましょう。なかなか興味深い事が分かって来ます(笑)
上の画像はシャープからお借りしました。これはこの夏に採用された新基準(日本電機工業会 自主基準HD-128)に基づいたPM2.5への対応の数値です。HD-128の具体的な内容については不明ですが、各メーカーの表示を見ると共通している部分があります。それは
1)0.1~2.5μmの粒子を99%キャッチ
2)換気等による屋外からの新たな粒子の侵入は考慮しておりません
3)この空気清浄機では0.1μm未満の微粒子状物質については、除去の確認ができていません。また、空気中の有害物質のすべてを除去できるものではありません。
4)32㎡(約8畳)の密閉空間での効果であり、実使用空間での結果ではありません。
5)日本電機工業会 自主基準(HD-128)判定基準:0.1~2.5μmの微粒子状物質を、32㎡(約8畳)の密閉空間で99%除去する時間が90分以内であること。1)については優秀と言って良いでしょう。ただ2)4)5)を見る限り、例によって現実離れしてテストだと分かりますね。日本の住宅は1時間で50%の空気が入れ替わる様に設計されています。ですから、いつも通り実用性能は無視されていますね。メーカーに優しく消費者に厳しいのが日本電機工業会ですから当然かも知れませんが(笑) 3)は常識的な注意書きです。
一見すると素晴らしい内容に見えるのですが、色々と不思議な事があります。何と言っても全メーカーがテストをクリアして同じ表示をしている事です。春先にウチのブログをご覧になった方はお分かりでしょうが、この夏までメーカーによってPM2.5への対応の数値は違っていました。こんな感じです
こちらは同じくシャープの夏までの表示です。ご覧の通り、0.3μmの粒子を99.97%キャッチすると言うHEPAフィルタの理論値をそのまま並べているだけですね。これは日立なんかも同じです。
こちらはパナソニックの物です。こちらは実機を使って実際に自社で測定した結果ですね。まあ、自社って所が引っかかりますが、実測する姿勢は評価できます。0.3~2.5μmの粒子を約98%キャッチした訳ですね。
ダイキンはHPを速攻で改変したために魚拓は取れませんでしたが、この夏まではこう表記してしました。
「本体性能で0.3μm以上の微粒子を9分で集塵」
この集塵とは8畳間でのタバコの煙が1.25mg/㎥から0.15mg/㎥に減る事だそうです。9分で8割程度集塵したと言う事ですね。どうせならもう少し時間をかけて捕集率を上げてもよさそうなんですが、多分これ以上大して上がらないのでしょうね(笑)
つまり、夏まではこれだけバラバラの表示と性能だった物が、この夏に突如横一線に並びました。但し、性能が向上した訳ではありません。春と同じモデルが新しいテストをした途端、皆同じになりました。パナソニックに至っては何故か性能が向上しています(笑)
日教組主催の運動会ならこれで万々歳なんでしょうけど、これでは比較になりません(笑) さらに極めつけなのがこちらです
こちらは東芝の新型エアコン「大清快 GDRシリーズ」の広告なんですが、何と只のエアコンがこの新テストをクリアしてしまいました(笑)
もうHEPAフィルタガーどころの騒ぎではありません。何せマトモなフィルタを積んでいないエアコンでもクリア出来るテストなんですから(笑)
ハッキリ言いますが、この新規格には全く意味がありません(笑)この東芝の新型エアコンは簡易の電気集塵方式ですから一定の集塵力はあるでしょうが、HEPAフィルタ搭載空気清浄機と対等の浄化能力があるとは思えません。そう考えるとテストの側のハードルが大幅に下がった事になります。
テストのトリックについては良く分かりませんが、密閉状態なので自然減衰がある事と処理時間が90分と長い事なんかに秘密がありそうです。また粒径の最大値が2.5μmと大きくなった分、体積比や重量比で計測すると微小粒子の捕集率が低くてもクリア出来るのかも知れません。残念ながらテストに使う粉塵の構成比が分からないので推測ですが。
ひょっとするとサーキュレーターで攪拌するだけでかなりの量が減衰し、もしかしたら両手に濡れタオルを持って90分振り回すだけでもテストをクリア出来るかも知れません(笑)
ともかく、現状の規格ではPM2.5に対して現実的な処理能力があるとはとてもじゃないが言えません。
「たわごと」とはこう言うモノに使う言葉ですね(笑)





現実的な対応
そんな訳ですからメーカーの言う事は信用出来ません。ではどうすれば良いのでしょうか?
一番良いのは外気の侵入をを遮断する事ですが、それでは建築基準法に抵触しますのでそんな訳には行きません。
もう一度、上の環境省のレポートを見てみましょう。このレポートではPMの健康被害のリスクは1μmから10μm程度の粒子が最も高いとされています。それならば花粉対策と同様と判断出来ます。ですから、フィルタ式の空気清浄機ならば全て軽減効果はあるでしょうし、花粉と同じく風量優先でお選びになると良いでしょう。
PM2.5は花粉よりムラがないでしょうから、窓や換気口などから絶えず流入して来ます。ですから、どこぞの間抜けなテストの様に密閉空間を想定しても意味はありません。そうすると継続的で絶対的な処理量がモノを言って来ますから、パワーの無いモデルでは処理しきれません。まずは風量です。
ただ、PM2.5の厄介なところは下限が無い事です。0.1μm以下の微小粒子の健康リスクについては専門家の間でも意見が分かれていますから、安全とも危険とも言えません。ただ、現状では過去の統計を見る限りハッキリとした影響は見つからないと言う事だけですね。
微小粒子の捕集に関してはフィルタの性能がモノを言いますから、HEPAのような高性能フィルタの方が若干有利になります。若干と言うのは実際若干しか差が無いからです(笑)
粒子径が小さくなればなるほど除去する装置側にも精度が要求されます。高価なPM2.5対策マスクでも、ほんの少しでも顔との間に隙間が開いていたら意味がなくなります。それと同じ様に家電メーカー製の安価な空気清浄機は隙間だらけで、とてもじゃないが制度を求められるような作りにはなっていません。
大体、家庭用ゲーム機より安い機械で健康が買えるのなら誰も苦労はしません(笑)
ではブルーエアやカドーなどを選べば良いのかと言うとそう言う話ではありません。確かに両者を選べば家電メーカー機よりはずっと好成績を残すでしょうが、相手が0.1μm以下でしかも毎時50%室内の空気が入れ替わるとしたらブルーエアやカドーでも太刀打ち出来ません。もうレベルが違うのです。
最も安価にPM2.5の大半を遮断したいと言うのなら、出来合いの核シェルターをお買いになって、中から一歩も出ずに空気清浄機と一緒に暮らすのが一番割安な方法です。これは冗談で言っている訳ではありません。本当の話です。
快適に暮らしたいと言うのであれば財閥系メーカーに設計を依頼して、自宅をクリーンルームと同等の環境に変えるしかありません。但し、億単位のお金がかかるでしょうが。
PM2.5の心配と無縁の生活をするにはこの程度のコストがかかります。
ですから、最も現実的な対応は過剰に反応するのを止めて出費を抑える事ですね。その予算を使って高性能の炊飯器でも買って、毎日美味しいご飯を食べる方がよほど幸福な人生を送れると思います(笑)
でもどうしても心配なら最もリスクの高い部分に絞って対策する事です。それが最初にお話した花粉同様と見て空気清浄機を選ぶと言う方法です。家庭用空気清浄機でPM2.5の完全除去は物理的に不可能ですが、範囲を絞ってやる事で一定の軽減効果は期待出来ます。費用対効果を考えてもこの方法を選ぶと良いと思います。
ある時、中国周代の杞の国の男が、天が落ちて来るのではないかと心配になり食事も喉を通らず夜も眠れなくなりました。それを心配した友人が「天というものは気が積み重なった物に過ぎないから落ちて来る事は無い」と言って安心させようとしました。それを聞いた男は「天が気で出来ているなら日や月や星が落ちて来るだろう」と不安になりました。
友人は「日や月や星も気で出来ていて、その中で輝きを持っているに過ぎない。だから仮に落ちて来たとしても怪我をする事はない」と言って安心させました。すると今度は「大地が崩れたらどうしよう」と男は言い出しました(笑)
これは中国古典の列子の一節です。この後友人は「大地は土が重なった物で、毎日人が踏み固めているから崩れる事は無い」と言って男を安心させるのですが、これが皆さんお使いになってる「杞憂」の語源ですね(笑)
実は列子ではこの後で、この話を聞いた賢者の言葉がつづられています。
賢者は男の取り越し苦労と同時に、友人の屁理屈をたしなめてからこう言います。「天地が崩れようが崩れまいが、そんな事に心を乱されない無心の境地が大切なのだ」と。
やはり炊飯器を買った方が良さそうですね(笑)


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