シャープ製空気清浄機の特徴やプラズマクラスター等の機能についてお話させて頂きます。
始めに
空気清浄機は各メーカーごとに個別の機能や特徴があります。空気清浄機の場合は基本構造に大差ない分、こうした特殊機能による差別化が明暗を分ける事になり、各社過剰とも思える宣伝合戦を繰り広げています。迂闊に宣伝に乗せられず、それが本当に必要な機能なのか見極める事が肝要です。
個々の機能だけ抜き出して検証して行っても良いのですが、メーカー単位で分析する方が皆さんには便利で分かりやすいと思います。ですから、ここからは主要な空気清浄機メーカーごとに分けてお話して行きます。
トップバッターは功罪の激しいシャープからです(笑)
シャープ製空気清浄機の特徴
空気清浄機はシャープを代表する家電製品なんですが、構造的には他社と大きく異なる幾つかの特徴を持っています。
第一に皆さんご存知のプラズマクラスターですね。現在では色々なシャープ製品にこの機能が搭載されています。
二番目は背面吸気です。他社の空気清浄機は正面か側面から汚れた空気を吸い込むのですが、シャープのみ背面から吸い込むように設計されています。
三番目は脱臭フィルタの独自配置です。これは前回ご説明させて頂きましたが、こんな不合理な配置をしているのは世界中でシャープと日立の一部モデルだけです。これももう少し検証してみましょう。
どれも空気清浄機の常識から外れた奇妙な物なんですが、彼らは頑としてその優位性を説いています。本当にそれは優れた機能なのか、今回はその辺りを検証して行きたいと思います。

プラズマクラスター
プラズマクラスターとは
「プラズマクラスターとは、自然界にあるのと同じ+(プラス)と-(マイナス)のイオンをプラズマ放電により作り出し放出。浮遊カビ菌等を空中で除去し、浮遊ウイルスの作用を抑え、浮遊カビ菌等を空中で除去するシャープ独自の技術です。」 (シャープHPより)
空気清浄機の章を最初からご覧になった皆さんの中はピンと来た方もいらっしゃるのではないでしょうか、お察しの通りこれはイオン式空気清浄機と全く同じ原理の物です。つまり、単なるマイナスイオン発生装置の事です。シャープ独自の技術はマイナスイオンをプラズマクラスターと呼び変えただけです。安い技術ですね(笑)
一応、シャープは色々と虫の良い理屈をならべて、このプラズマクラスターなる物が単なるマイナスイオンとは別物だと言い張っているのですが、次にその辺りをもう少し詳しく見て行きましょう。
プラズマクラスターの仕組み
プラズマクラスターユニットの仕組み
こちらがプラズマクラスター発生器の概念図です。図表はシャープのHPよりお借りしています。ご覧の通り、プラス放電を行う電極とマイナス放電を行う電極が2つセットになった物で構成されています。
右側のマイナス放電を行うユニットはイオン式空気清浄機と全く同じメカニズムです。空気を原料としてこれに高圧放電を加える事でプラズマ化(空気を構成する分子が電離された状態、まあ、煮込みすぎて具が溶けてスープ状になったシチューみたいな物です)させて、そこでシャープの場合はマイナス電荷を持った酸素を作り出すのが目的の様ですね。
左のプラス放電を行うユニットは電位が違うだけで構造は同じなんですが、かなり特殊な物です。何せ原料が空気中の水分ですから湿度が低いと原料不足で期待通り働かないと思うのですが、シャープはそれに対する説明を一切行っていません。きっと困るのでしょう(笑)
さらに、シャープの言う通り水素のプラスイオンと酸素のマイナスイオンが生成されたとしても、逆の電位を持つこの両者が引き合って再結合してH2O、つまり水になってしまうと思うのですが、それに対する説明もありません。実際のプラズマクラスターユニットの両電極の距離は5cm程度しか離れていません。不思議な話ですね(笑)

プラズマクラスターイオン
さて、そうした素朴な疑問を無視して、シャープの言い分通りにプラスとマイナスのイオンが生成されたとしてもその寿命は1秒以下しかありません。それでは困るので長寿命化(30秒程度)にするための方便が必要になって来ます。それがまたしても水の分子ですね。この非常に不安定で他の分子と結合すればすぐに消滅するイオンに、都合良く水の分子だけが集まって来て、さらに都合良くイオンを包む様に並んで長寿命化出来るそうです(笑)
仮にそんな事が起きたとして、部屋の湿度が低い場合は十分な水の分子が不足して長寿命化出来ない筈なんですが、その事についてシャープは固く口を噤んでいます。
また、コロナ放電の際に必ず生成されるオゾンについても一切言及していません。

プラズマクラスター除菌のメカニズム
こちらがプラズマクラスターの除菌のメカニズムの説明です。ここはシャープのHPの記述をそのまま使いましょう。こう書かれています
「カビ菌やウイルスの表面に付着した時のみ非常に酸化力の強いOHラジカルに変化し、瞬時に表面のタンパク質から水素(H)を抜き取りタンパク質を分解。」
どうやって只の分子の結合体のプラズマクラスターがカビ菌やウイルスだけを見分ける事が出来るのでしょうか? 人が吸い込んで鼻や喉の粘膜に取り付いた時は「ああ、これは人間の粘膜だからOHラジカルに変化するのは止めよう」とか考えるのでしょうか? もしそうだとしたらノーベル賞モノの発見だと思いますが(笑)
だんだん書いていて馬鹿らしくなって来ましたが、シャープにかかれば私がアイドルタレントと恋人同士になるのも簡単そうですね(笑) これだけ「たられば」を連発すれば大抵の事は理論上は可能になります。問題は本当にそれが起きているのか、あるいは可能なのかと言う事です。次にそれを見て行きましょう。

プラズマクラスターの効果
シャープの言い分
まずはシャープの言い分から見て行きましょう。上述したシャープのHPではテストの内容によってプラズマクラスターのイオン濃度を3,000~50,000個/cm3と10倍以上の出力差でテストしています。変な話ですね。良く見ると除菌系のテストでは50,000個/cm3(プラズマクラスター25000が2台分)、それ以外では小型の物を使っています。
さて、そのカビやウイルスの除菌系テストで使われているのが 業務用プラズマクラスターイオン発生機IG-840-W
です。イオン濃度約25,000個/cm3、対応畳数30畳、約50㎡の空間用の物です。実際のテストのイオン濃度は50,000個/cm3ですから、この機械を強運転で2台使っている訳ですね。
で、そのテスト内容ですがウイルス除菌の場合、1㎥のケースにこの幅94奥行23高さ47cmの機械を2台押し込んで、強運転で10分稼動した時に99.9%のウイルスを除去したそうです(笑) 念の為言っておきますが書き間違いではありませんよ、縦横高さ全て1mの空間でのテストです(笑)
これって、除去したのではなく本体に吸い込んで、本体内部に取り付いただけじゃないでしょうか?(笑)
仮に除菌出来ていたとして、1㎥の空間を除菌するのにIG-840を2台使ってますから、6畳間(22.5㎥)の空間で同程度の成績を残すなら45台稼動させなければならなくなります。素晴らしすぎて涙が出て来ますね(笑)
カビの滅菌テストの場合はもう少し広い2.6㎥のケースを使っています。何せ1㎥のケースじゃあ試験体を置く事も出来ませんからね(笑)
この場合でも、6畳間で試験と同じ結果を期待するなら17台のIG-840が必要になる計算になります。IG-840の対応畳数30畳とはどうやって導き出された数字なんでしょうか?(笑)
と言う事で、除菌系に関して実用的な能力は無いと言って良いのではないでしょうか? 何せ前提条件が現実離れしていますから。次は脱臭等の能力です。
まずグラフを見て下さい。非常に不自然です。上の2つと違い、ここからは研究所の数値データをシャープが独自に換算してグラフにしています。
初期値の臭気強度3.5と言うのは、臭気強度3の「楽に感知出来る臭い」と同じく4の「強い臭い」の中間値と言う事でしょう。そして臭気強度2が「何の臭いであるか分かる弱い臭い(認知閾値)」同じく1が「やっと感知出来る臭い(検知閾値)」です。
何が不自然かと言うと、今まではプラズマクラスターが無い状態と有る状態を比較していましたが、この臭気に関してはプラズマクラスター5000と20000を比較しているだけです。しかも自然減衰で臭気強度が2になる時間に関して一切書かれていません。図では遥か彼方でなる様な書き方をしてますが、実際の時間が分からない以上これを信じろと言うのは無理があります。
普通に考えればプラズマクラスターが無い状態でX時間、5000ならN倍の2時間、20000ならさらに倍の1時間と書く筈なんですが、なぜそうしないのでしょうか? プラズマクラスターも主力の7000や25000ではなく、なぜ半端な5000や20000なんでしょうか? お得意の50000でテストすればもっと早くなる様に思いますがなぜしないのでしょうか?
どう考えても不自然極まりないのですが、残念ながら私は化学は専門ではありません。臭気強度を1つ下げるために必要なOHラジカルの分子数なんて分かりません。何か裏があるのは分かりますが、それが何なのか具体的に指摘出来ないのが残念です。化学にお強い方はちょっと考えてみて下さい(笑)
さらに異様なのがこのグラフです。これはハウスダスト中の浮遊ダニのアレル物質の濃度変化のグラフなんですが、縦の数値は1pg/c㎥しか違いません。さらに横に至っては何と数値が書かれていません(笑)
プラズマクラスターが無い状態でハウスダスト中の浮遊ダニのアレル物質の自然増加が2pg/c㎥に達する時間は不明です(笑) 1日なのか1年なのか1000年なのか分かりません。いったいシャープは何が言いたいのでしょうか?(笑)
もう一度念の為に言っておきますが、これらのグラフは世界有数の総合家電メーカーの公式ホームページに「プラズマクラスター技術」として堂々と紹介されている物です。皆さんを笑わせるために書かれた物ではありません(笑)





各界からの反論
当然の話なんですが、専門家ではない私が見てもツッコミ所満載のプラズマクラスターには色々な方面から疑問や反論が寄せられています。全部上げていくとそれだけでサイト1つ立ち上げられる量なので、幾つか代表的な物を取り上げてみましょう。
その1.絶対量に対する疑問
プラズマクラスターのイオン濃度は25000で25,000個/c㎥、7000で7,000個/c㎥あります。一見すると凄い数に見えるのですが、空気1/c㎥中の分子数は25,000,000,000,000,000,000個に達します。これは水に例えると、プラズマクラスター25000でさえ中規模のダム湖に目薬を一滴垂らすのと同じ程度の量しか無いと言う事です。
この目薬一滴分の量で、果たしてダム湖全体に作用するのでしょうか、と言う疑問ですね。
例えば、皆さんご存知の有害物質にダイオキシンがあります。この強毒性発ガン物質のダイオキシンは普通の空気中にも含まれていて、その数が100,000個/c㎥ほどあります。ですが問題にはなりません。なぜならこの程度の量なら少なすぎて健康に影響ないからです。
そのまた5分の1程度の量しか無いプラズマクラスターに、シャープの言う様な効果があるとは考えにくいと言うのがその主張ですね。
その2.オゾンによる効果
先にお話した通り、プラズマクラスターのメカニズムでは必ずオゾンが生成されます。オゾンは強力な酸化作用を持ち、自然界では塩素の約5倍、フッ素に次ぐ強力な殺菌消臭能力を持っています。
問題はその生成量なんですがシャープは一切公表していません。困った話なんですが、実はウチにはプラズマクラスター7000と光速ストリーマーの実機があります。で、実際に稼動時の臭いを嗅いだ事があるのですが、どちらもハッキリとしたオゾン臭はありません。微かにそれっぽい臭いを感じる程度ですね。私も商売柄オゾン臭には慣れてますから、他の臭いと間違う事はありません。
ですからオゾンの生成量は認知閾値である、最も少ない0.01ppm程度と仮定しましょう。
で、このオゾン0.01ppmを分子量に直すと250,000,000,000個/c㎥程になります。プラズマクラスター25000が生成するプラズマクラスターイオンの百万倍の量ですね(笑)
オゾンにはもう1つ大きな違いがあります。それは分子の半減期、つまり寿命の問題です。
プラズマクラスターイオンはそのままだと寿命はナノ秒、つまり1秒も持ちません。シャープの言う様に水の分子が上手く取り付いたとしてその寿命は30秒程度です。ですがオゾンの場合は、一般家庭での生存時間は数時間から10数時間程度はあります。仮に室温20℃で低湿度で無風の状態だとオゾンの半減期は3日もあります。プラズマクラスターイオンより遥かに長寿命なんです。
つまり、仮にプラズマクラスターに効果が有ったとしても、実際に作用しているのは貧弱なプラズマクラスターイオンではなく、その百万倍の量と数百倍の寿命を持つオゾンなのではないかと言う疑問ですね。さてさて、皆さんはどう思われますか?


公的機関からの指摘
これ以外にも、こちらは疑問などではなく、公的機関が実証実験を行った結果のよるシャープに対する指導や指摘を集めてみました。こちらはネットでご覧になった方も多いと思います。
●(2012/11/28)消費者庁 プラズマクラスター効果なし ダニのふん、死骸の浮遊アレル物質のたんぱく質を分解・除去
こちらは一部で大きなニュースになりましたからご存知の方多いでしょう。ご覧の通り、消費者庁からプラズマクラスター搭載掃除機に、シャープが喧伝していた能力が無いとして景品表示法違反の措置命令が出されました。分かりやすく言うと「誇大広告」だとお叱りを受けたわけです。
シャープ側の主張の根拠となった実験は上で指摘したのと同じ、お得意の1㎥のケースを使った物です(笑) この密閉容器に掃除機を入れて15分以上駆動させたら効果があったと言うものですね。押し込んだ掃除機は1台だけですから上の実験よりは少しだけマシかも知れませんが(笑)
消費者庁はこれを6畳程度の空間で実験して効果なしと判断したみたいですが、まあ当然でしょう。シャープも正直に「6畳間のアレル物質の除去には掃除機が23台必要です」と書けば良かったのですが、それでは宣伝にはならなかったのでしょうね(笑)
これはかなり大きな騒動になりまして、価格コムなどではそれまでプラズマクラスターの素晴らしさを執拗に訴えていた人達が、クモの子散らすように居なくなりました(笑) あの人達はどこへ行ったのでしょうか(笑)
●(2011/10/18)日本感染症学会 新規電気製品の浮遊ウイルス除去効果、HEPAフィルター装着空気清浄機に遠く及ばず
こちらは日本感染症学会のレポートです。学会ですから感染症に関しては日本で最高の権威になります。
内容はインフルエンザウイルスに対する効果の実験です。シャープのプラズマクラスター、パナソニックのナノイー、ダイキンのストリーマ放電、さらにイオン発生器を持たない只のHEPAフィルター搭載機の4種を、実際にインフルエンザウイルスを撒いた部屋の中に入れて実験しています。
結果はプラズマクラスターとストリーマ放電は全く効果が無く、ナノイーのみ微弱な効果がありました。最も効果が有ったのは、皮肉にもイオン発生器を持たないHEPAフィルター搭載機でした。お粗末な話です(笑)
分かりやすく言うと、こうしたイオン発生器よりも古典的なフィルタの方が多くのインフルエンザウイルスを吸着処理していた、と言う事になります(笑)
ナノイーに関しては別回で詳しくご説明しますが、恐らくオゾン水を撒いていると思われますので若干の除菌効果があったのでしょう。
●(2012/7/31)日本感染症学会 殺菌性能を有する空中浮遊物質の放出を謳う各種電気製品の,寒天平板培地上の細菌に対する殺菌能の本体についての解析
こちらはウイルス以外の雑菌に対する殺菌能力の実験です。殺菌能力はそのまま消臭能力に繋がります。興味深い実験なんですが、テストしたのはシャープのプラズマクラスター、パナソニックのナノイー、キングジムのビオンの3機種です。
結果なんですが、こちらは大成功。3機種とも大幅な滅菌に成功しました。が、念の為に副次的に生成されるオゾンだけを除去してテストしてみると、今度は全く効果がありません。次にオゾンのみでテストすると大幅な滅菌に成功しました。
つまり、殺菌効果があるのは同時に放出されているオゾンの効果で、プラズマクラスター等のイオン類は何の役にも立っていなかった訳です。ほとんど落語みたいなオチですね(笑)
結論
以上がプラズマクラスターと呼ばれる物の正体です。
結局、プラズマクラスターと言うのはインフルエンザの様なウイルスには全く無力で、ダニの糞などのアレルの抑制には実用レベルの効果は無く、副次的に大量に生成されるオゾンのおかげで一定の消臭能力を持つだけの装置と言うのが結論です。
これはオカルトだったマイナスイオン商法が名前を変えただけの物、と言っても差し支えないと思います。あちらも実際の効能の大半はオゾンのおかげでしたから。
そんな訳ですから、プラズマクラスターには消臭能力だけは期待できますが、それ以外は笑い話にしかなりません。酒席のお供にでも使って下さい(笑)
プラズマクラスターの寿命
さて、そんな簡易オゾン消臭機のプラズマクラスターにも当然寿命があります。ですが、ここでもシャープはやらかしています。
シャープによるとプラズマクラスター25000は約17,500時間(1日24時間連続使用して約2年)が寿命とされています。こちらは妥当な数値だと思います。また、プラズマクラスター25000は電極のメンテナンスも可能に出来てますから、きちんと手入れをしてやれば数値通りの寿命が期待出来ます。
問題はプラズマクラスター7000です。こちらは寿命が設定されていません。シャープによるとプラズマクラスター7000は出力が低いので寿命の設定は必要ないとの事ですから、恐らく7年程度は持つと言う計算をしているのでしょう。それ自体はありえる話です。
ですが致命的な問題はプラズマクラスター7000が一切のメンテナンスが出来ない設計になっている事です。
プラズマクラスターユニットの様に高圧放電する機械は電極に大きな負荷がかかります。自身も放電により消耗しますが、それ以上に厄介なのが空気中のシリコン等が電極に付着して放電出来なくなる事です。
シリコンはヘアスプレーだけではなく、家庭用の洗剤やワックス、果ては化粧品やティッシュに至るまで幅広く使われてます。こうしたシリコンが電極に次々と吸着して行き皮膜を作ってしまいます。シリコンは絶縁性が高いので、一旦皮膜を作られたら二度と放電出来なくなります。また、石油ファンヒーター等はセンサーに取り付いたシリコンで誤作動します。
ご家庭のシリコンを伴う環境にも寄りますが、早ければ半年くらい通常は1年くらいでプラズマクラスター7000は放電出来なくなります。ですがお使いの方はこの事を知りません。なぜなら、動作を示すパイロットランプは点いているからです。
シリコンが原因で放電が止まるなんて初歩的な事は当然シャープも知っています。その上でわざとメンテナンス出来ない設計にしています。プラズマクラスター7000の電極を掃除するには本体を分解する以外にありません。そして、それは誰にでも出来る事ではありません。
こんな事をするメリットは何かあるのでしょうか。単に電極を綿棒で掃除出来る小さな窓を1つ作るだけで済む事です。コスト的にも大した事ではありません。
そう考えると結論は1つです。それはシャープはプラズマクラスター7000を長く稼動させたくない、これ以外にありません。それがどんな理由なのかは分かりませんが、客を騙してでも使わせたくない何かがあるのでしょう。
プラズマクラスター7000をお使いの方は耳を澄ませて下さい。購入当時のように「ジー」と言う放電音が聞こえなければ、貴方がお使いのプラズマクラスター7000は動いていません。再稼動させたければ本体を分解してプラズマクラスター7000ユニットの電極を綿棒で掃除するか、シャープのサポートへ連絡して動作不良で修理させるかしかありません。
また、どうしてもプラズマクラスターをお使いになりたいと言うのであれば、プラズマクラスター25000を搭載したモデルをお選び下さい。でないと、一年後にはただの箱に成り下がってしまいます。ご注意下さい。

背面吸気
背面吸気のメリット
シャープの空気清浄機で一番の謎がこの背面吸気、背面排気システムです。他社の空気清浄機は前面もしくは側面から吸気して、本体上部から斜め前に排気します。これは一般的なやり方です。ですがシャープのみ背面から吸気して、本体上部から斜め後に排気します。どう考えても合理性に欠けますね。
一応シャープの言い分では、部屋全体の空気の循環スピードが上がるメリットと遮蔽パネルの無い背面から一気に吸気出来るメリットとがある事になっています。
最初の、部屋全体の空気の循環スピードが上がるメリットと言うのはどう考えてもこじ付けでしょう。何せシャープの業務用空気清浄機は前面吸気と側面吸気ですからね(笑)
方式としての背面吸気に優位性があるならば、一番効率にうるさい業務用モデルに採用するでしょう。それともシャープの業務用空気清浄機は家庭用空気清浄機よりも劣る方式を採用しているのでしょうか?(笑)
2つ目の、遮蔽パネルの無い背面から一気に吸気出来るメリットと言うのは確かにあるでしょう。但し、メリットがあるのは遮蔽パネルが無い事で背面吸気ではありません。効率を考えるなら遮蔽パネルが無い前面吸気が一番なんですが、これだと騒音の問題が出て来ます。昔の空気清浄機はこの方式だったのですが、静音性とデザイン性から遮蔽パネルが付くようになりました。
静音性優位の考え方かとも思いましたが、シャープの空気清浄機は特別静かではありません。数値を見てもらえば分かりますが、他メーカーと変わりません。また、風量が多い訳でもありません。風量が変わらないなら遮蔽パネルが無い優位性は薄れてしまいます。大量に空気を吸い込む代わりに音がうるさい、だから背面吸気と言うなら理解出来ますが、そうでないならあまり意味はありません。
こう考えると背面吸気のメリットと言うのは殆ど無いと言う事になります。念のため他の機器でエアロフローに背面吸気を取り入れた物は無いか探したのですが、一部のデスクトップPCで採用されているぐらいで他にはありません。わざわざデメリットの多いこの方式に固執しなければならない理由でもあるのでしょうか?

背面吸気のデメリット
デメリットの方は致命的な物があります。それは空気清浄機の周りに一定の空間が必要になる事ですね。日本の住環境において最もコストが高いのがスペースです。ですから家具にしろ家電にしろ創意工夫して省スペースな物を開発して来ました。それに逆行するわけですね。
背面吸気ですから汚れた空気を本体の後に回り込ませる必要があります。上面からは排気の気流がありますから、側面に一定の空間が必要です。また、背面にも十分な空間が無いと気流が妨げられるだけではなく、空気清浄機後方の壁面に大量の埃が付いて黒く汚れる事になります。
シャープは最低3cm開ければ良いと言っていますが、これは大嘘です。3cm程度のスペースでは気流が妨げられ壁面が汚れるだけではなく、後方に噴出した排気が壁の低い位置に吹き付けられる事で部屋全体に流れる気流を作れません。空気清浄機の周りの空気は浄化出来ても、部屋全体の空気を浄化出来なくなります。
自ら背面吸気の気流の優位性を説きながら、物を売りつけるためなら舌の根も乾かぬ内に平気で嘘を付く。これだけに止まらず、こと空気清浄機に関してはこの会社の姿勢は最低です。
ではどの程度のスペースが必要なのでしょうか。シャープは後方は壁から30cm離すのを推薦していますから、恐らくその位置で使う事を前提に設計したのでしょう。ホント、3cmなんて大嘘をよく付けたものです。
側面に関しては具体的な数値は示されていません。ですが取説の図を見る限り30cm以上のスペースを開ける方が良いみたいです。仮に40cm程度と仮定しましょう。
その際、必要となるスペースは空気清浄機本体が幅41cm奥行34cmですからこれを加えると、幅121cm奥行64cmにもなります。これはシャープの400Lクラスの冷蔵庫2台分の設置スペースと同じです。
幅はともかく奥行の64cmと言うのは致命的です。日本の家具は奥行40cm程度に作られていますから、家具の前へ置くと壁から1m飛び出す事になります。しかも後方排気の力が落ちて部屋全体に気流が循環しません。
結局、設置するとすれば家具と家具の間に挟み込むか、部屋の四隅に置くしかありません。そして何れの場合もシャープの言う様な空気の循環は起きないでしょう。
これではまるで空気清浄機に汚れた空気を吸わさない様にしているみたいな仕様です。何でこんな日本の住宅事情に反する仕様にしたのでしょうか?

脱臭フィルタの独自配置
この脱臭フィルタの独自配置については前回お話した様に、脱臭フィルタを犠牲にしてHEPAフィルタの寿命を延ばすのが目的です。こうすればHEPAフィルタの寿命は延びますが、その代わりに脱臭フィルタが短期間で能力を喪失してしまう欠点があります。奇妙な配置ですが元ネタがあります。
左の図はクリーンルーム用の一体式ユニットの模式図なんですが、ご覧の様にプレフィルタとHEPAフィルタの間に中性能フィルタ(MEPAフィルター)を挟んでいます。中性能フィルターはHEPAフィルタより性能は落ちますが安価で経済性に優れます。
通常、プレフィルタと中性能フィルタで吸引した粉塵の90%程度を捕集し、残りの10%をHEPAフィルタで処理します。こうする事で高価なHEPAフィルタの寿命を延ばしてランニングコストを低減させている訳ですね。
このユニットの場合は粉塵が溜まったら中性能フィルターを交換するだけで済みますが、シャープの場合は脱臭フィルタに中性能フィルターと同じ役目を押し付けているために、本来の能力を喪失してしまうのです。
確かにこうすればHEPAフィルタの寿命は延びるでしょう。その代わりにユーザーは異臭に怯えながら脱臭フィルタをマメに洗浄し、場合によったら交換しなければなりません。特に洗浄出来ないモデルの場合は即交換になりますから、HEPAフィルタは長持ちしても脱臭フィルタは半年で交換なんて事にもなりかねません。
実際にシャープは「使用環境によっては数週間から数ヶ月でフィルターからニオイが発生しフィルター交換が必要な場合があります」とこっそり表記しています。10年(520週)交換不要の筈が、最悪3週間程度でダメになるって事です。寿命が100分の1以上縮む、如意棒みたいなフィルタですね(笑)
まあそんな訳で、売りつけたシャープは左団扇で、得だと思って飛びついたユーザーだけが苦労する間抜けな仕様です。朝三暮四とはこの事ですよ。
ただ、プラズマクラスターをお使いの方は、撒き散らされたオゾンで鼻の粘膜を溶かされて嗅覚が麻痺してますから、臭いが消えたように感じるでしょう。
まあ、それはそれで幸せなのかも知れません(笑)

その他の特徴
これら以外にもプラズマクラスターを使った除電効果や美肌効果なんかを謳っていますが、除電はオゾンを使った静電気除去効果で、これはプラズマクラスターに限らずイオン式全てに同様の効果があります。別にシャープ独自の物ではありません。
オゾンによる静電気除去は産業界ではポピュラーな方法で、イオナイザーのような物からオゾン洗浄まで幅広く使われています。
また、美肌系の効果なんですがこれは絶対に真に受けないで下さい。プラズマクラスターイオンが運ぶ水分量は問題外の少なさですから、肌に潤いを与えられるような絶対量がありません。ですから、仮にシャープの言う様に肌に張りや艶が出たとしたら別の理由が想像されます。一番怪しいのがオゾンです。オゾンは皆さんご存知の活性酸素の一種で、表皮に取り付くと肌の細胞を破壊します。つまり肌が若返ったのではなく、オゾンに表皮を焼かれて代謝しただけと言う可能性があります。
何せメーカー真意を偽るような得体の知れない物に、肌を晒すなんて狂気の沙汰ですよ。仮にプラズマクラスターで健康被害が出たらシャープは確実に倒産するでしょう。そうなったら保障どころか治療費さえ出ませんよ。完全に泣き寝入りです。
どんな効果にも必ずそれが働くメカニズムがあります。ですが、プラズマクラスターに関しては怪しげな実験結果はあっても、それを裏付ける科学的な根拠と呼べる十分な研究も成果もありません。シャープはひたすら効果があるとだけ主張し、識者はそれに疑問を唱えるだけです。
皆さんがどちらをお信じなるかは自由ですが、プラズマクラスターに特別な事は期待なさらない方が賢明です。シャープの空気清浄機は賢者の石を積んでいる訳ではないのです(笑)

まとめ
今回はシャープ製空気清浄機の3つの大きな特徴について私なりに検証してみました。改めて言うまでもありませんが、これは私の個人的な意見で全てが正しいと言う訳ではありません。この稿に限らず、このブログは皆さんが皆さんなりの結論を導き出す何かの材料になればと思って書かれています。最終的にお決めになるのは皆さんです。さあ、ご決断下さい(笑)
さてさて、話を戻しましょう。ご覧の通り、シャープ製空気清浄機の特徴と言うのはユーザーのためと言うよりシャープのための仕様と言う物が大半です。カタログ等を見ると素晴らしい物に思えるでしょうが、冷静に考えると首を傾げたくなる物ばかりです。特に背面吸気に関しては営業的にも不利だと思うのですが、彼らは頑なにこの方式を採っています。何か呪術的な意味でもあるのでしょうか?(笑)
空気清浄機と言うのは構造もシンプルですし、加湿機能を使わずにきちんとメンテナンスしてやればどのメーカーの物でも大差はありません。空気清浄機の健康被害については後でまとめてご説明しますが、プラズマクラスターに関しても使い方を間違わなければ健康被害は出ないでしょう。
ですからシャープはダメだから他所のメーカーにしろとは言いません。但し、かなり癖のある機械ですから、その事を承知の上でお買いにならないと後で後悔する事になります。
家電製品の良し悪しは、お使いになる方の環境とマッチしているかが鍵です。私にとって最高でも皆さんにとっては最悪かもしれませんし、その逆もまた真なりです。
空調家電は美味くマッチしないと酷い目に合いますから、良くお考えの上でお選び下さいね。
シャープ製空気清浄機のまとめ
1.プラズマクラスターに期待出来るのは消臭能力のみ。人のいる時には使わない事。
2.満足に気流を循環させるには、本体含めて幅121cm以上奥行64cm上方は天井までの空きスペースが必要。
3.脱臭フィルタは洗浄可能なモデルを選ぶ事。でないと短期間で脱臭フィルタの交換が必要になる。
4.その代わり他メーカーよりHEPAフィルタは長寿命。
- 関連記事
-
- 空気清浄機その12。2012~13年ダイキン製モデル購入ガイド
- 空気清浄機その11。2012~13年シャープ製モデル購入ガイド
- 空気清浄機その5。パナソニック、バルミューダ、カドー、ブルーエア製空気清浄機の特徴(ナノイー等)
- 空気清浄機その4。ダイキン製空気清浄機の特徴(光速ストリーマ等)
- 空気清浄機その3。シャープ製空気清浄機の特徴(プラズマクラスター等)