空気清浄機の歴史や種類、そしてイオン式、ファン式、電気集塵式の仕組みや特徴についてお話させて頂きます。
始めに
毎年花粉のシーズンになるとニュースが騒がしくなります。最近ではこれに加えて中国から有毒物質を含むPM2.5が飛来して騒々しさが増しています。もっとも、PM2.5は以前から飛来してたのですが、政権が代わって報道されるようになっただけの話ですけど(笑)
しかもPM2.5に関しては、ニュースの原稿を書いている人間が正しい知識を持っていないためにかなり曲解して報道されています。日頃、政治がらみで中国の悪口を書けないうっぷんでも溜まっているのでしょうかねぇ?(笑)
それはともかく、花粉症等のアレルギー疾患をお持ちの方や小さなお子さんがいらっしゃる方にはご心配の方も多いでしょう。そんな皆さんの救世主になるかも知れないのが空気清浄機です。
ただ、末世の世に救世主が付き物のように、救世主にはニセ救世主が付き物です。残念ながら現在の空気清浄機市場では、様々なオカルトやニセ救世主が氾濫しています。いくら溺れているからと言って藁を掴んだのでは沈んでしまいます。まがい物を掴まされて泣きを見ないためには、正しい商品知識を持つ事が何よりも肝要です。
まずは、空気清浄機の種類や仕組みについてちょっとお勉強して行きましょう。
空気清浄機の歴史
黎明期から普及期まで
Wikipediaによりますと、空気清浄機の歴史は19世紀産業革命下の英国で開発されたそうです。ただ、この項は出典が怪しいので鵜呑みには出来ませんが(笑)
日本でも高度成長期の60年代半ばには業務用機が発売されています。当時は大気汚染が社会問題化した頃で現在の中国と似た環境でした。先日テレビで中国で空気の缶詰が発売されたのが話題になっていましたが、実はこの頃日本でも「富士山頂の空気」の缶詰が売られていたんですよ。さらに都心では「空気の自動販売機」なるものまで登場しました。よその国を笑ってられないですね(笑)
ただ、当時の空気清浄機の主用途は大気の浄化ではなく、主に集客施設でのタバコの煙の処理用として販売されていました。
家庭用機が普及しだしたのはもう少し後の80年代になってからです。この頃は深刻だった大気汚染も改善され、代わりに花粉症とタバコによる受動喫煙の問題がクローズアップされ始めました。 当時はバブル景気と言う事もあり、ずっと業務用と思われていた空気清浄機も徐々に小型化して、少しずつ一般家庭に普及して行きました。

普及期とマイナスイオンの嘘
爆発的に普及したのは90年代に入ってからです。この頃は花粉症が本格的に社会問題になり、高性能フィルターを搭載した高価な対花粉症モデルが発売されます。また当時の「マイナスイオン」健康ブームから、小型で安価なマイナスイオン発生装置としてイオン式空気清浄機が大ヒット商品になりました。
もっとも、このマイナスイオンの過剰な効能を謳ったイオン式空気清浄機は、後に公正取引委員会から効果が認められない不当表示として排除命令が出されます。これでマイナスイオンブームは一気に弾け飛び、国内メーカーはイオン式空気清浄機から撤退しました。イオン式の代表格であったTEACもその例外ではありませんでした。
2003年にはアメリカでも同じ様な事件が起きています。非営利の消費者団体が発行している月刊誌コンシューマー・レポートは、当時爆発的に売れていたイオン式空気清浄機「アイオニック・ブリーズ」を専門家が監修した独自の試験を踏まえて全く効果が無いと発表しました。さらに2005年にはこの機械が人体に有害なオゾンを発生させていると警鐘を鳴らしました。
コンシューマー・レポートはアメリカでは非常に権威のある情報誌で、掲載する商品は車から家電に至るまで全て独自テストをした上で評価します。評価の中立性を保つために一切の広告を受け付けず、会費と寄付だけで運営されています。最近では、iPhone4が売れなかったのはこの雑誌での評価が低かったためだとも言われています。
コンシューマー・レポートに酷評されたアイオニック・ブリーズは売り上げがガタ落ちになり、メーカーのシャーパー・イメージ社はコンシューマー・レポートに対して名誉毀損の裁判を起こしますがあえなく棄却されます。しかもコンシューマー・レポート側が裁判に要した費用を弁償すると言う完全な敗訴でした。後にシャーパー・イメージ社も倒産しました。
恐ろしい事にこのアイオニック・ブリーズ(Ionic Breeze)は日本で未だに売られています(日本名イオニック・ブリーズ)。倒産品を格安で仕入れて、何食わぬ顔して売りつけているわけですね。懲りない人達はどこにでも居るみたいです(笑)
現在、このマイナスイオンは中国でブームです。中国製の扇風機をお持ちの方にはマイナスイオンの発生装置が付いているモデルがあると思います。オカルトに騙されるのは無知な人間ですから、彼らは今通過儀礼を受けてる最中ですね。
まあ、日本も笑ってはいられません。今の国産空気清浄機にはマイナスイオンが名前を変えて搭載されています。例のプラズマなんたらとかですね。要は、ちょっと手の込んだオカルトにランクアップしただけです(笑)


成熟しない成熟期
話を戻しましょう。近年になってからはさらに多岐な機能や効用が謳われる様になります。シックハウス症候群対策の対ホルムアルデヒドモデル、さらに鳥インフルエンザ等の対ウイルスモデルなど、本来の機能とは無関係にどんどんオカルト化が進み、ついには美容に良いと言い出すモデルまで登場しました(笑)
その内にスイッチを入れるだけで寿命が延びたり病気が治ったりするかも知れませんね(笑)
興味深いのは、日本の空気清浄機の普及率は大気汚染度の低下と反比例しています。現在、日本国内で空気清浄機が無いと健康被害が起こるような地域は殆どありません。にもかかわらず、逆に売れ行きを伸ばし続けています。
花粉症等のアレルギーをお持ちの方がいらっしゃるご家庭はともかく、そうでないご家庭でも空気清浄機を買われると言う事は、既にこの商品は不安商法の対象に分類されるかも知れません。
「空気清浄機が無いと病気になるのではないか?」なんて考えてこのブログをご覧の皆さん、それはメーカーやメディアが意図的に不安を煽っているのに乗せられているだけです。早い話が、騙されてますよ(笑)
アレルギー疾患でもない限り、今の日本にお住まいのご家庭には空気清浄機は必要ありません。
PM2.5やタバコの煙に関しても、空気清浄機は無力ではありませんが有力でもありません。早い話が、気休め程度の能力しか持ち合わせていません。無いよりはマシですが、有ったからと言って問題が解決する訳ではないのです。
その辺りを含めて、次は空気清浄機の種類と仕組みを見て行きましょう。

空気清浄機の種類と空気清浄機選びのポイント
始めに
現在の家庭用空気清浄機は集塵方式の違いから、大きく分けると以下の3つの種類があります。
イオン式空気清浄機
高圧放電ユニットを使い付近の微粒子などを帯電させて集塵する方式。安価で基本的にファンを持たないのと、マイナスイオンを効能を過剰に広告するのが特徴。
但し、埃や花粉には無力で空気清浄機としては極めて低性能。しかもオゾンが生成されます。2千円くらいから。

ファン式空気清浄機
ファンを使って空気を吸入しフィルターで集塵する原始的だが確実な方式。性能と価格はファンとフィルターの能力に比例し、余計なオカルト機能を付けない限りは一切オゾンが生成されないのが特徴。
主流の方式だが交換フィルタのランニングコストが高いのが玉にキズ。4千円くらいから。

電気集塵式空気清浄機
上の2方式のハイブリッドタイプ。ファンで吸入した所で高圧放電をかけ、粉塵を帯電させてから逆電位の電極やフィルターに吸着させて集塵する方式。必ずしも高性能なフィルタを必要としないのが特徴。但し、放電の方式によっては微量のオゾンが生成されます。
ランニングコストは安いがメンテナンスが面倒なのが玉にキズ。5千円くらいから。
集塵方式は以上の3種ですが、最近はこれに加湿機能を追加した加湿空気清浄機が増えています。

空気清浄機選びのポイント
空気清浄機の原理は非常に単純です。ファンなどで粉塵などを集めてフィルターで漉し取るだけです。それだけに空気清浄機の能力は集塵力と濾過力、つまりファンの風量とフィルターの性能で決まります。
また、風量が同じなら大きなファンの方が騒音は小さく、性能が同じならサイズの大きいフィルターの方が処理能力は高くなります。つまり、一般的に言って、より大型のモデルの方が静かで高性能であると言えます。
何も高い物を買えとは言いませんが、空気清浄機に限って言えば大は小を兼ねますから、安価な小型の物を何台も買われるぐらいなら高価な大型の物を買われた方が後で後悔する確率はぐっと下がります。
また、空気清浄機で一番のネックになるのがメンテナンスの大変さです。メンテナンスの手間は台数に比例しますから、その点から見ても安易に数を増やすのは禁物です。後で必ず後悔する事になりますよ(笑)
空気清浄機は単純で技術的にはほぼ完成された機械です。10年前のモデルも最新のモデルも基本機能に優劣はありません。それだけにメーカー側は様々な付加価値をつけて差別化しようとして来ます。後でご説明しますが、こうした機能の大半が無益なだけでなく有害な物も少なくないのが現状です。
空気清浄機をお選びの際は、くれぐれもメーカーの怪しげな謳い文句には乗せられずに、基本性能に注視してお選びになって下さいね。
それと、これからご説明する3つのタイプなんですが、以前に私はこの3タイプを同時に購入して5年ほどテストした事があります。私はタバコは好きなんですがタバコの煙は大嫌いな狭量な喫煙者でして、エアコン使用時の煙の除去のために奮発して購入した訳です(笑)
その辺りの実体験も踏まえて、それぞれの特徴や長所と短所を見て行きましょう。
空気清浄機の仕組みと特徴
イオン式空気清浄機の仕組み
それではまず仕組みについてご説明します。例によって下手糞な図表なんですが我慢して下さい(笑)
ご覧の通り、本体の高圧放電ユニットが高電圧の放電をすると大気中の分子が電離して、正イオン(プラスイオン)と負イオン(マイナスイオン)が生成されます。
この内、室内に放出された負イオンが埃に吸着してマイナスに帯電させます。マイナスの電荷を帯びた埃は本体のプラス電極、つまり集塵板にクーロン力で吸引されて吸着します。
「クーロン力」なんて書くと小難しく感じる方は「静電気力」とお考え下さい。ブラウン管テレビや化学ぞうきんに埃が吸い寄せられるのと同じ力です。あれを利用しています。
実際は正イオンも空中の埃を帯電させてプラスの電荷を帯びた埃を作り出しますが、これらは集塵板には吸引されずに室内のマイナスの電荷を持った物に吸着します。確かに空気中の埃は減少しますが、その代わりに部屋が汚れるのがこの方式の特徴です。
上の図は最もポピュラーなコロナ放電タイプの概念図なんですが、機械によってはもう少し凝った方式もあります。ただ、空中の埃を負イオンで帯電させて吸着すると言うメカニズムは皆同じです。
また、イオン式空気清浄機はシビアな結果が要求される業務用では殆ど使われていません。人の出入りが少ない、倉庫や保管庫のような所で一部使われているだけです。つまり、マイナスイオンが必要ない環境でだけ使われていると言う訳ですね(笑)

イオン式空気清浄機の長所
イオン式空気清浄機の長所は何と言っても安いと言う事です。ご覧の通り、非常に単純な構造の上に部品は電極が2つと制御部のみですから、製造原価は数百円でも作れます。製造に特殊な技術も不要ですから、このタイプの商品はほとんど中国製です。
2つ目は、ランニングコストが安いのも特徴です。ファンレスの場合はモーターもありませんし、性格上特殊なフィルタも必要としません。また、構造が単純なので小型化も容易です。
もう1つ、イオン式空気清浄機の多くはファンレスタイプですからファンノイズが無く、比較的音が静かなのも特徴です。但し、無音ではありません。高圧放電ユニットは独特な「ジー」と言う音を発します。
特に電極が汚れたり劣化してくるとノイズは大きくなり、また雨天など湿度が高い時は同じく音量が上がり「パチパチ」と言う放電音が加わります。就寝時など、人によっては耳障りな音になりますのでご注意下さい。
また、必ずしも長所とは言い切れないのですが、イオン式空気清浄機は高圧放電させるために必ずオゾンが生成されます。24時間駆動し続けるなら、このオゾンによる消臭効果が期待出来ます。
イオン式空気清浄機の短所
さて、お安くてお手軽なイオン式空気清浄機なんですが、残念ながら数多くの短所を持っています。まず第一に、イオン式は空気清浄機としては絶望的に能力が低い事が上げられます。
よくメーカーの説明文には「帯電した埃が磁石の様に引き寄せられます」等と書かれていますがこれは真っ赤な嘘で、帯電した埃に働くクーロン力は非常に微弱で、運良く集塵板の近くを通った物以外には全く無力です。
また、力が弱すぎるために花粉のような大きな粒子には無力で、微小な粒子しか誘引出来ません。つまり、運良く集塵板の近くを通った極小の粒子の一部を吸着する能力しか持っていません。
よく「運転何分後の室内の埃の量」なんてグラフがもっともらしく載せられてますが、あれは初歩的なトリックで、密閉した室内の埃は時間経過と共に天井や壁や床に取り付いて減って行きます。つまり空気清浄機が無くても部屋の埃は勝手に減って行くのですね(笑)
過去の実験では、イオン式空気清浄機を置かない方が室内の埃は早く無くなった、なんて例まであります。ホント、騙されちゃダメですよ(笑)
2つ目は、お手入れが非常に面倒だと言う事です。
帯電した微粒子は集塵板以外にも本体や高圧放電ユニットにメッキの様にこびり付きます。さらにイオン式空気清浄機を置いてある回りも同じ様に汚れます。特にタバコを吸われる場合は最悪で、集塵板以外にも毎月毎月ヤ二でベタベタになった機械をバラして洗浄し、黒くなった壁や台も掃除しなければなりません。
また、部屋中にマイナスに帯電した埃が立ち込めるためにプラスの電荷を持った物、例えば他の家電製品やパソコン等にも埃は引き寄せられて吸着します。つまり、イオン式空気清浄機をお使いの部屋に置いてある全ての家電製品が集塵板のように汚れる事になります。
3つ目はオゾンの問題です。イオン式空気清浄機は構造上必ずオゾンが発生します。オゾンについては後で詳しくお話しますが、高い殺菌消臭能力を持つ反面、致死量が設定された有毒ガスでもあります。つまり、倉庫などで使うならともかく、基本的に人がいる環境では使う物ではないと言う事ですね。
「オゾン=悪」と言うのも短絡的な発想なんですが、例え微量と言えども密閉した室内で一日中吸い続けるのは体に良い訳がありません。特に中国製品は品質にバラつきが大きくて、中にはメーカーが設定した以上の出力で動いている物もあるでしょうから、そういった場合は冗談抜きで健康被害のリスクがあります。
イオン式空気清浄機の結論
結論としては、イオン式を購入されるのはお金の無駄使いだけではなく、場合によっては有害でさえあります。集塵能力が無い訳ではありませんが、吸着出来るのは偶然に機械の側を漂った微粒子のみで、しかもそのごく一部だけです。
実際にイオン式空気清浄機にタバコの煙を吹き付けても、大半はそのまま流れて行ってしまいます。これは浄化と呼ぶには程遠い能力です。最近は安物の中国製品が出回っているみたいですが、インテリアとしてならともかく、空気清浄機としては無能な上に有害なので手を出さないのが賢明です。
ファン式空気清浄機の仕組み
単純な構造なんですが、こちらも図にしてみました。ちょっとご覧下さい。
ご覧のように断面の模式図です。ファンの力で汚れた空気を吸引して、3枚のフィルタで塵や臭いを濾過吸着して浄化します。
プレフィルタはプラスチック製の目の細かい網になっていて、髪の毛や糸くずのような目に見える大きなゴミを濾過します。ちょうどエアコンのフィルタと同じ様な物ですね。こちらはプラスチック製ですので、何度も洗浄再使用が可能です。
集塵フィルタはプレフィルタの網の目をすり抜けて来た、細かい粉塵を濾過します。高性能フィルタとかHEPAフィルタとか呼ばれる、細かい繊維が寄り集まった特殊な構造をしています。こちらは非常にデリケートな作りのフィルタで洗浄も再使用も出来ません。一定以上汚れてしまったら交換です。
消臭フィルタは集塵フィルタをすり抜けて来た臭いの原因物質を吸着して処理します。臭いの原因は分子レベルの化学物質ですから濾過できません。活性炭のように表面積がやたらと広い物質に、運良く原因物質が衝突して吸着するのを待つだけです。こちらは種類によって洗浄再使用可能な物とそうでない物とがあります。
ファン式空気清浄機の能力の決め手は2つ、それはファンの風量と集塵フィルタの能力です。ファンがどれだけ多くの汚れた空気を吸引出来るか、そして集塵フィルタがどれだけ細かい塵を濾過出来るかが空気清浄機の能力を決めます。風量が多く高性能なフィルタを使う方が能力は高くなりますが、当然お値段も高くなります(笑)
ファン式空気清浄機は家庭用業務用共に主流の方式で、小型の物から大型の物まで大量の商品が販売されています。

ファン式空気清浄機の長所
ファン式空気清浄機の一番の長所は何と言ってもメンテナンスが楽だと言う事ですね。他の方式とは違い、ファン式空気清浄機は集塵に電気的な力を利用していません。ファンが空気を吸引しているだけです。ですから、汚れるのは空気の通り道だけです。
理屈の上では集塵フィルタの後の部分には殆ど埃は付かない筈ですから、掃除をするのはプレフィルタとダクトの部分だけです。そして、たまに消臭フィルタを洗浄すれば良いだけです。他の方式のように空気清浄機本体や部屋全体が汚れる事はありません。まあ、理屈の上ではですが(笑)
2つ目は、現在日本で販売されている家庭用空気清浄機で、最も浄化性能が良いのがこの方式の物です。理屈の上では次にご紹介する電気集塵式の方が集塵能力が高い筈なんですが、何をトチ狂ったか販売メーカーのダイキンは電気集塵式の能力をランニングコストの低減の方に振り向けてしまいました。ですから浄化能力はファン式の高級モデルの方が能力は高いです。
もっとも、この比較は私の個人的な意見です。残念ながらメーカーは搭載しているフィルタの理論的な能力は公表しても、実際の空気清浄機の処理能力については固く口を閉ざしたままです。公的機関のテスト結果や各空気清浄機の構造や特性からそう判断しました。
3つ目は、オゾンの心配がいらないと言う事です。「イオン式は静かなので小さなお子さんのいるお部屋に最適です」なんて無責任極まりない事を書いてる人達がいますがとんでもない話です。カナダやカリフォルニアではオゾンを発生する空気清浄機は販売禁止になっています。もちろん健康リスクがあるからです。
その点、このファン式空気清浄機は原理上オゾンは発生しませんから安心です。小さなお子さんや気管支疾患をお持ちの方、あるいは高齢者がいらっしゃるご家庭でも安心してお使いになれます。ペットをお飼いになってるご家庭も同様です。但し、後で詳しくご説明しますがプラズマクラスターに代表されるイオン発生器は原理的に必ずオゾンが生成されます。こうした機能が付いた空気清浄機をお使いの際は取り扱いに注意して下さい。
もう1つ、ファン式空気清浄機は価格や性能に応じた選択肢が多い事も長所に上げられます。何も全て最高性能の物を選ぶ必要はありません。用途によっては安価な物の方が都合が良い場合もあります。
例えばタバコ用の空気清浄機の場合は、どれだけ手入れしても2~3年で空気清浄機本体がヤニ臭くなって使えなくなります。短いスパンで買い換えるなら高級機を買うのは無駄ですし、至近距離で使うなら小型の物でも一定の効果はあります。
安価な物が欲しければ小型で低性能フィルターのモデルを選べば良いですし、高価でも高性能な物が欲しければ大型で高性能フィルターのモデルを選べば良いだけです。安価な卓上モデルから大型の工業用モデルまで多種多量の商品が販売されているのがこの方式の強みです。
ファン式空気清浄機の短所
ファン式空気清浄機の一番の短所は高性能になればなるほど交換フィルタが高価になるためにランニングコストが高くなる事です。これは集塵能力が高い物ほど大型になりますし、大型で濾過能力が高いフィルタほど高価になるからですね。また、目の細かい高性能フィルタは安価なフィルタより目詰まりするのが早いために交換時期も短くなります。
まあ、フィルタは消耗品ですのでこれを短所と呼ぶのは酷なんですが、ファン式空気清浄機の場合は性能とランニングコストは完全にトレードオフです。何れかをお選びいただくしかありません。
理不尽なようですが空気清浄機は一種の贅沢品です。フィルタも再使用出来ませんが、これは使い捨てだからあの程度の価格で済んでいるとお考え下さい。再生使用可能なら今の十倍してもおかしくありません。それだけ一般家庭には場違いな高性能な物を使っていると言う事です。
もう1つ、ファンを使っていますからファンノイズが出ます。つまり騒音ですね。ノイズは大型の物ほど小さく、小型の物ほど大きくなります。これはモーターを使っている家電、例えば掃除機などと同じです。
静かな空気清浄機をお求めならば、なるべく大型の物をお選びになると良いでしょう。小型で静かな物は能力が低過ぎて役に立ちません。いくら静かでも役に立たないなら使う意味はありませんよ(笑)
ファン式空気清浄機の結論
ファン式空気清浄機は主流商品ですので万人にお勧め出来ます。用途や環境、そして予算に合わせて様々な機種から選択が可能ですから最適な一台を見つけるのにも苦労しません。もちろん、一定以上の能力があればの話ですが(笑)
余計な機能を使わなければオゾンも出ませんしメンテナンスも楽です。但し、楽な分、相応の対価は必要になります(笑)
特にお勧めなのが、タバコの煙の処理をお考えの方です。但し、特にファン式空気清浄機が優れている訳ではありません。他の方式だとメンテナンスで地獄を見るからです(笑)
ただ、タバコを吸われる場合はフィルタの寿命は通常の3分の1程度に縮まります。また、タバコを吸わない場合よりお手入れも面倒になります。これは実際に私が使ってみた上での感想です。その事を良くお考えの上でお選び下さい。
電気集塵式空気清浄機の仕組み
それでは電気集塵式空気清浄機の仕組みを見て行きましょう。現在、家庭用電気集塵式空気清浄機を作っているのは国内ではダイキンだけです。ですからダイキン式電気集塵についてご説明します。基本的にはファン式をベースにしていますので、プレフィルタや消臭フィルタの役目は同じです。違うのは電気集塵ユニットが追加された事です。
電気集塵ユニットでプラスイオンが生成され、汚れた空気に放出されます。放出されたプラスイオンは汚れた空気中の塵に吸着してプラスに帯電させます。プレフィルタをすり抜けた細かい塵はマイナスに帯電した集塵フィルタにクーロン力で吸着して集塵されます。方式としてはイオン式とファン式のハイブリッドになります。
横から見た図だけだと分かりづらいのでダイキンのHPから図をお借りしました。
2が電気集塵ユニット、3がプレフィルタ、4が集塵フィルタ、5、6が消臭フィルタです。
電気集塵部分だけを取り出したのが上の図です。仕組みがお分かりになったでしょうか?
全体としてはイオン式の短所を無くし、長所だけを取り出してファン式に取り付けた形になります。純粋に集塵力をアップする方向で設計すれば強力な空気清浄機が出来るのですが、残念ながらダイキンは真逆の方向を向いています。その辺りも含めて長所と短所を見ていきましょう。



電気集塵式空気清浄機の長所
電気集塵式空気清浄機の長所は必ずしも高性能なフィルターを必要としない事から、比較的ランニングコストが安い点が挙げられます。
集塵はファンで行いますが、吸着は帯電による静電気力を利用しますので、必ずしも高密度のフィルターを必要としません。主に工業用で使われる方式なんですが、工業用の物のフィルターはただの金属板の物が多いです。よくパチンコ屋の天井に吊り下げられているタバコの煙の吸入器などはこの方式ですね。
ただ、電気集塵式はタバコの煙などの細かい粒子の処理は得意なんですが、花粉や埃などの大きく重い粒子の処理は不得手ですから家庭用機には帯電処理を施した通常のフィルターが装備されています。
残念なのはこの点です。クーロン力は小さな粒子ほど相対的に強い力が働きますから、今問題になっているPM2.5の処理にはうってつけなんです。ですから強力な電気集塵ユニットに高性能フィルタを搭載すれば、ランニングコストは高くなり、メンテナンスの手間はかかりますが、代わりに強力なPM2.5用の空気清浄機が作れる筈なんです。
ですがダイキンはランニングコストとメンテナンスの手間の軽減に焦点を合わせた設計をしています。電気集塵ユニットは去年から低性能な物に変わり、フィルタは安価な中性能フィルタを使っています。
確かにメンテナンスは楽になり、フィルタの寿命も延びるでしょうが、代償として集塵能力が落ちていると思います。本当に空気清浄機が必要ではない環境でお使いになるなら良いかも知れません(笑)
電気集塵式空気清浄機の短所
電気集塵式空気清浄機の短所はイオン式のメンテナンスと全く同じで、お手入れが非常に面倒な事です。帯電した微粒子は理屈の上ではフィルターに吸着する事になってますが、業務用と違い安価な家庭用機の内部は隙間だらけで、ダクトやファンはもちろん本体のあらゆる箇所に吸着します。
特にタバコを吸われる場合は地獄で、毎月涙目になって放電ユニットや内部の洗浄をしても2年もすれば消臭フィルターなど無意味になり、空気清浄機自体が強烈なヤニ臭さを発する事になります。
私も商売柄、面倒なメンテナンスには慣れているつもりでしたが、月一でやるイオン式と電気集塵式のお手入れには何度も心が折れそうになりました(笑)
ともかく、喫煙者の方は絶対にこの2方式の空気清浄機には手を出さない事です。地獄を見ますよ(笑)
最後にもう1つ、電気集塵式も高圧放電ユニットを持っていますから放電ノイズがある事と微量のオゾンを生成します。この辺りはイオン式と同じです。
違いはイオン式が生成されたオゾンをそのまま室内に放出するのに対して、電気集塵式は生成されたオゾンがフィルタ等の空気清浄機内部を通過する際に大半が崩壊してしまうと言う事です。ですから、出力が同じならイオン式より電気集塵式から放出されるオゾンの量は少なくなります。
もっとも、ダイキンはストリーマなんて名前のオゾン生成器を別に積んでますから、あまり意味はありませんが(笑)
電気集塵式空気清浄機の結論
電気集塵式空気清浄機がお勧めなのは、メンテナンスは苦にならないが交換フィルタ代を安く上げたいと言う皆さんです。本当か嘘かは分かりませんがダイキンはフィルタが10年持つと言っています。シャープを筆頭に他のファン式メーカーも同じ事を言ってますが、後でご説明しますがこちらは確実に嘘です。
フィルタが10年持つならダイキンの電気集塵式はフィルタ交換不要と言う事になります。何せあの本体が10年持つ訳ありませんから(笑)
但し、タバコをお吸いの方はフィルタの寿命は3年程度(旧型プリーツ式の場合フィルタ1枚当り8ヶ月)と思って下さい。また、タバコをお吸いにならない方はダイキンの電気集塵式に高い清浄能力を期待しないで下さい。せいぜい、ファン式HEPAフィルタ搭載機の8~9掛け程度の能力じゃないかと推察します。
フィルタと言うのは粉塵を集めて溜めておく物です。言ってみれば掃除機の紙パックと同じですね。通常、家庭用空気清浄機のHEPAフィルタの寿命は2年くらいです。つまり高性能フィルタは2年で袋が一杯になるだけ粉塵を集める訳です。
それに対して10年経たないと袋が一杯にならないフィルタとはどんな物でしょう?
一応、ダイキンの場合は旧型の場合は2年持つ薄いプリーツフィルタ5枚で10年持つと言う計算なんですが、あのペラペラのフィルタでファン式の高性能フィルタと同等の塵芥保持能力があるとはにわかに信じられません。新型フィルタの場合も電気集塵で微細粉塵の捕集量は増えている筈ですから、同等の保持能力があるとは考えにくいですし、フィルタ側のマイナス電位が10年持つのかどうかも疑問です。
もちろん、電気集塵式の特性を考えるとファン式の高性能フィルタと単純比較は出来ませんが、本当に10年持つとしたら集塵能力が低い、つまりスカスカで吸い込んだ埃の一部を取り逃がしているとしか考えられません。
「電気集塵式の薄型中性能フィルタの塵芥保持能力が同サイズのHEPAフィルタと同じである」とかの客観的なデータがあるならともかく、ダイキンの漠然とした説明を見た限りではそう判断せざるを得ません。
ですから、現行の電気集塵式空気清浄機は捕集性能よりもフィルタ代が大事だとお考えの皆さん向きの商品です。
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